暁の空来

時間が許す限り楽しい事が書ければそれで良いかと?

居酒屋「ねこ酒場」の宴

居酒屋「ねこ酒場」の宴 第一話完結編

 

今宵も居酒屋「ねこ酒場」は賑わいを見せていた。

暖簾をくぐると、そこには人間と猫が仲良く酒を酌み交わす風景が広がっていた。

特別な夜、常連猫のクロの誕生日を祝うための宴が始まっていた。


店主の山田さんが特製の猫用ケーキを持って登場すると、店内は歓声で包まれた。

クロは誇らしげにケーキの前に座り、「みんな、今日はありがとうニャ!」と声を上げた。

仲間の猫たちも口々に祝福の言葉を贈り、誕生日ソングが自然と始まった。


カウンター席では、クロが器用に小さな杯を持ち上げて、「乾杯、ニャ!」と声を上げた。

隣の席には、三毛猫のミケが人間の手から小魚のつまみをもらって嬉しそうにしている。

人間の常連客の一人、田中さんがほろ酔い気分で話しかけた。

「クロ、お前は本当に酒が強いなあ。今夜も一緒に飲もうか?」

クロはニヤリと笑いながら、「田中さん、それよりも新しいおつまみ、もう一つお願いするニャ!」と答えた。


テーブル席では、白猫のシロが他の猫たちと猫用の小さな食器を囲んで、ちょっとした宴会を開いていた。

シロが小さな声で、

「今日は鯖の刺身が美味しいニャ。」

と言うと、隣のトラ猫のタマが

「それなら、もう一杯いかが?」と酒を勧めた。


一方で、隅っこのテーブルでは、田中さんとシロがしんみりと話をしていた。

田中さんが昔飼っていた猫の話をしながら、

「あの頃は、本当に楽しかったなあ。」と目を細める。

シロが優しく田中さんの腕に頭を擦りつけ、

「今も楽しい時間を過ごしているニャ。これからも一緒にね。」と囁く。


酒が進むにつれて、猫たちも少し酔っ払ってきた。

クロが酔った勢いで立ち上がり、まるでダンスを踊るかのように足を滑らせて床に転がると、店内は笑い声で溢れた。

ミケも負けじと、しばしば寝落ちしそうになる姿を見せていた。


そんな中、店主の山田さんが「そろそろ締めの一杯にしようか」と声をかけた。

人間も猫も一斉に杯を持ち上げ、「乾杯!」と声を揃えた。

夜も更け、宴が終わる頃には、皆が満足そうな顔をしていた。


クロは最後に、

「今日は本当に楽しかったニャ。またみんなで集まろうね!」と声を上げた。

人間たちも笑顔でうなずき、居酒屋「ねこ酒場」は静かに夜の帳を閉じた。


外に出ると、夜空には星が瞬いていた。

田中さんがシロを抱き上げ、

「これからも一緒に、楽しい時間を過ごそうな。」

と呟くと、シロは優しく田中さんの頬に顔を擦りつけた。

次回、第一話完結編 「燕子花の風景」お楽しみに!