第一話:父親猫が残したデコレーション 第一章
第一章
朝陽が昇ると同時に、アイリン丸は静岡の清水市場へと向かって走り出した。
アイリンはハンドルを握りながら、今日の市場でどんな人々と出会えるのかワクワクしていた。
「清水市場には美味しい魚がいっぱいニャン!」
アイリンは独り言をつぶやきながら、アクセルを少し踏み込んだ。
清水の街に近づくにつれ、道は次第に賑やかになってきた。
市場に向かうトラックや商人たちが行き交い、活気に満ちていた。
アイリンは、その風景を見ながら微笑んだ。
市場の入り口に到着すると、アイリンはトラックを駐車スペースに慎重に停めた。
彼女はミラーを確認し、車体がまっすぐになっているかを確認した。
「よし、完璧ニャン!」
アイリンは満足げに頷き、トラックのドアを開けて降り立った。
早速後ろの扉を開けて、冷蔵会社から運んできた冷凍イカをパレット毎、電動ローラーに載せて市場に降ろし終えた。
アイリンのトラックには電動ローラーが架装されているので積み下ろしが素早く出来るので、負担はない。
市場の中は既に多くの人々で賑わっていた。
新鮮な魚介類や野菜、果物が所狭しと並べられ、活気ある声が飛び交っていた。
アイリンはその中を歩きながら、目を輝かせた。
「おはようございますニャン!」
アイリンは近くの魚屋さんに声をかけた。
魚屋の店主は、彼女の挨拶に笑顔で応えた。
「おはよう、アイリンちゃん。今日も元気だね。」
「ええ、おじさんもとっても元気そうだニャン。ここに来るの、とっても楽しみにしてたんですニャン!」
魚屋の店主は、アイリンの明るい態度に微笑んでいた。
その時、アイリンの耳に何か異変を感じた。
振り返ると、大きな声で叫んでいる男性が見えた。
彼は市場の中央で何かを叫びながら走っていた。
「どうしたんだろうニャン?」
アイリンは好奇心に駆られ、彼の方へと向かった。
近づいてみると、男性は市場の常連客であることがわかった。
彼は市場の皆に知らせたいことがあると言っていた。
「みんな、大変だ!来てくれ!市場の入り口近くで大きなトラックが事故を起こしたらしい!」
その言葉に市場の人々はざわめき始めた。
アイリンも心配になり、急いで入り口に向かった。
市場の入り口には確かに大きなトラックが横転していた。
アイリンはその光景を見て、胸が痛んだ。運転手が無事かどうか確認しようと近づいた。
「大丈夫ですかニャン?」
アイリンはトラックのドアを叩きながら声をかけた。
中からは弱々しい声が返ってきた。
「助けて…」
アイリンは急いで携帯電話を取り出し、救急車を呼んだ。
その間にも市場の人々が集まり、協力してトラックの運転手を助けようとしていた。
救急車が到着し、運転手はすぐに病院へと運ばれた。
アイリンはほっと胸を撫で下ろし、市場の皆と共に運転手の無事を祈った。
「今日は大変な始まりだったニャン。でも、皆が協力して助け合えたことが嬉しいニャン。」
アイリンはそう言って、再び市場の中へと足を運んだ。
荷卸しの確認伝票と次の荷積みの依頼書を受けて、時間が来るまで寝台で安らいだ。
大抵のトラックは空荷で走る事は無いので、アイリン丸も清水のやっちゃ場からカツオを積んで一路、東京の冷凍工場に向かった。
この一件で、市場の人々との絆がさらに深まった。
アイリンは、困った時に助け合うことの大切さを再確認した。
次回 第二章 お楽しみに!!