暁の空来

時間が許す限り楽しい事が書ければそれで良いかと?

千歳飴の記憶

車を走らせていると、目の前に広がるのは神社の石段。その前を通りかかった瞬間、晴れ着姿の子供たちが目に飛び込んできた。片手に千歳飴をぶら下げ、小さな足で一段一段、親の手を借りながら慎重に階段を降りている。微笑む親たちの表情に、どこか誇らしさと優しさが混ざり合っている。

「ああ、今日は七五三なんだね」と思った途端、胸の奥から記憶の波が押し寄せてきた。かつて自分の子供たちも、同じように晴れ着を着せてもらい、この神社でお参りをしたのだった。慌ただしく支度をし、小さな手を引いて石段を上り、境内で家族そろって神妙な面持ちで祈りを捧げたあの日々が、目の前に鮮やかに甦る。

「千歳飴ちょうだい!」とせがむ幼い声、着物がほどけないよう気を付けながら遊び回る小さな背中。その一つ一つが、今となっては愛おしい記憶となって心に残っている。その頃の自分は、子供たちの成長をただ願うばかりだった。健やかであればそれでいい。そんな素朴な祈りを、同じ石段の上で胸に秘めていたことを思い出す。

今日見かけた親子たちの光景が、自分の過去と重なる。何気ない日常の中で、こうして季節の行事を通して親子の絆を紡ぐ瞬間が、どれほど貴重で尊いものか。子供たちはいつしか成長し、親の手を離れていくが、この記憶だけは時が経とうと消えないものだと、静かに感じる。

神社を後にしながら、ふと笑みがこぼれる。過去の記憶と今をつなぐ不思議な瞬間。千歳飴を揺らしながら階段を下りていく子供たちの姿は、どこか未来への希望をも感じさせた。