暁の空来

時間が許す限り楽しい事が書ければそれで良いかと?

一抹の不安を胸に

 台風5号が東北に迫るとの報に接し、避難指示が出た。慌ただしく避難所へと向かう道中、心の奥底に一抹の不安が広がる。自然の力の前では、どれほど準備をしても足りないと感じるからだ。

 避難所の静かな空間に身を置きながら、周囲の人々の表情に同じ不安を見て取る。小さな子どもが親に寄り添い、老人が静かに座るその光景は、普段の生活では見られない不安定な一面を映し出している。

 風の音が強くなるたびに、窓の外を覗き込む自分に気づく。何も起こらないようにと、ただただ祈る。その祈りは、声に出さずとも、誰もが同じ思いを抱えているのだろう。

 「何も無いことだけを祈る」という、その思いが避難所全体に広がる。自然の猛威を前にして、人間は無力であることを痛感する瞬間だが、それでも私たちは祈りを捧げ続ける。それが今できる唯一の行動だからだ。

 台風が過ぎ去った後、避難所を後にする時、無事であることへの安堵感が訪れるのだろうか。それとも、まだ不安は残るのだろうか。どちらにしても、今この瞬間に願うのは、ただ「何も無いこと」である。それだけを祈り、静かにその時を待つ。