暁の空来

時間が許す限り楽しい事が書ければそれで良いかと?

沈黙の夏

夏の終わりが近づき、夕暮れの風が少し涼しく感じられる頃、ふと考えた。そういえば、今年は蝉の声をほとんど耳にしなかった。いつもなら、夏の朝から夕方まで響き渡るあの賑やかな声が、今年は不思議なほど静かだったのだ。

思い返してみれば、この夏は異常なほどの暑さが続いた。日中の太陽は容赦なく照りつけ、木陰さえも焼けるような暑さに包まれていた。もしかすると、その過酷な環境に蝉たちも怯え、地上に出るのをためらったのだろうか。あるいは、ただ静かに夏の終わりを待っていたのかもしれない。

いつもなら煩わしくも感じる蝉の鳴き声が、今年は一種の寂しさを感じさせる。夏の象徴であるその音がない夏は、どこか空虚で、夏らしさが薄れたような気さえする。

しかし、蝉の声がなくとも、確かに夏はそこにあった。焼けるような暑さ、じっとりとした湿気、そして無言のまま過ぎ去ろうとする季節。気づかぬうちに、私たちの心にも、夏の余韻が静かに刻まれているのだ。