暁の空来

時間が許す限り楽しい事が書ければそれで良いかと?

孤高の風

道の駅に立ち寄ると、秋の澄んだ空に一匹だけ鯉のぼりが泳いでいた。季節外れの風に乗り、ゆらりと空に浮かぶその姿は、どこか誇らしげでもある。しかし、同時にその孤独な存在は、静かな虚しさを感じさせる。

春の賑わいの頃、たくさんの鯉が空を飾っていたはずだ。家族の願いが込められ、風を切って泳ぐその姿は力強かった。だが今、秋の冷たい風に乗るのは、たった一匹。何かを成し遂げたかのような満足げな顔をしているようにも見えるが、その周りには誰もいない。

季節が変わり、役目を終えた鯉のぼりは、本来ならばもう片付けられているはずだ。しかし、この一匹だけが空に残り、時の流れから取り残されたように風に揺れている。その誇らしさと虚しさが交錯する姿は、どこか人間の生き様にも通じる。

風に逆らうでもなく、ただ流れに身を任せて泳ぎ続けるその鯉は、やがて秋の空に消えていくのだろうか。それとも、まだまだ何かを期待しているのか。見る者の胸には、様々な感情が渦巻く。